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<4つの庭の提案>

和歌山の夏はとても暑い。
自然素材を使い、家族とゆっくり過ごせる家を望まれた建築主さんに4つの庭をご提案した。

まず、皆で集まるリビングの南北に二つの庭を繋げた。南北の日照の違いで生じる温度差で微気候を作り、夏の涼を提供することが目的である。南北の温度差は空気を動かし、風を作るのである。朝夕で庭に散水して窓を開ければ一層涼がとれるだろう。風は吹き抜けを介して家中を抜けるよう室内では所々風通しの開口を作っている。入居後、建築主さんからこれまでよりクーラーを使わず済んだと伺えたのは嬉しかった。もちろんムクの木で囲まれている断熱効果も大きい。

庭はリビングの延長としても考えてられている。夏は「北デッキ」、冬は南の「芝庭」に椅子を持ち出してくつろいだり愛犬と遊んだりBBQをしたりもできるだろう。
「北デッキ」と「木の庭」は湯上がりに涼める場所でもあり、木が育ってくると連続して一つの景色ともなる。
一方和室前は静かな「石庭」とした。
もともとの敷地高低差を利用して「石庭」と「芝庭」は僅かにレベルを変え、趣を変えている。これはまた、縁側との関係を「芝庭」では地面に近く、和室前「石庭」では腰掛けられる高さとすることにもなり都合が良かった。

南北の庭の奥にはそれぞれ小空間を作っている。リビングから見るとそれぞれの扉が庭の奥に見え、行き止まりではなく更に先に行ける感覚を持たせている。計画的には小空間の用途は決めていない。スペース1には不透明な、スペース2には透明な屋根をそれぞれ掛けている。
これらの庭は内部空間と様々に繋がり、目に見えない広がりを作り出していくだろう。完成してスペース1の中から家を振りかえった時、その効果を確信することができた。

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