リビングとダイニングのスペースが雁行*している。当初は、ダイニングとリビングの天井に6センチの段差があった。恐らく構造のためだろう。この段差が、2つの空間を中途半端に仕切っていた。そこで2つのスケッチを出した。ダイニングとリビングの空間を色彩などでもっと積極的に分ける案と、もう一案は2つの天井高を揃えて連続性を持たせる案である。後者が選ばれた。構造は触らずにまずは天井高を2540ミリに揃え、人が滞留する場所などの天井を一段高くして照明を集中配置させる。モールディングは天井を縁取り、雁行する空間の動きを視覚化することに奉仕させる。モールディングの大きさは悩ましかった。今回はふと見上げた時に細かな曲面の彫刻的な陰影が見えるくらいのところを狙った。壁と折り上げ天井部はモーヴ系の色を入れ、2540ミリの天井面にも凹凸と同系色を入れている。
*雁行:空を飛ぶ雁の群れのように斜めにずれる配置。
モールディングは、施工上も塗装とクロスの異素材の出会う部分を綺麗に見せる見切縁の役目を果たしている。途中、モールディングカーテンボックス案も検討したが、むしろカーテンポール(壁下地補強をしてある)を使うこの案のほうに住宅らしい自由度があると判断した。施主の選ばれた鋳鉄の手摺と照明器具がアクセントになっている。
当初、"カヴェット”や”デント”のモールディング形状も検討したが、最も歴史が古く基本的な"カヴェット”や”デント”が国産モールディングに見当たらなかった。時間があれば特注も可能との事で今後検討の余地がありそうだ。
2階個室群は機能的に納めている。これは6畳二間の間仕切り壁を取り、約12畳の主寝室とした部屋である。ロフトに昇る梯子階段の階段下部は奥行き90センチの洋服収納とした。一部ミラーを仕込んだ2枚の引戸は連動して間口幅1200ミリがフルオープンになる。
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