kronos architects & associates l'd / 西本直子

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世界文化遺産写真展”アンコールを生きる”BAKU斎藤写真展/会場構成

〜空間を巻き込む一枚の壁〜
大人だけでなく、夏休みを利用してやってくるであろう子供達に、カンボジアの森や遺跡を体感させる展覧会にしたいとのことであった。バクさんはアンコールワットはじめバンテアイチュマール他貴重な遺跡を撮影されているが、バイヨンでは塔に彫られた気の遠くなるような数の尊顔を撮影し尽くすという偉業をなした人である。そのご尊顔を実物大で焼付けた3本の塔を会場の天井高さ一杯に挿入するとのことでワクワクした。展示内容が2部構成で、色彩によって”遺跡と森”を被写体とするモノクロ写真と、”周辺に暮らす人々”を被写体とするカラー写真とに明確に分けられていることも知った。

構成として2案提案して選ばれたのは、一枚のコの字の壁で、壁内側の中央スペースとそれをぐるりと巡る壁外側の道を造る案だった。1枚の壁の内外は様々に対比される。壁の外側を巡る道には水平の動きがあり、壁の内側には3本の塔の垂直性がある。壁の外側には緑のカンボジアンシルクを貼り”森と遺跡”をテーマとするモノクロ写真を展示し、壁の内側の囲まれたスペースの壁面は白色塗装として”人々”のカラー写真を展示する。壁の内外を巡ることでお互いが響きあっていく。バクさんの理解を得て、緑のカンボジアンシルクを使うことができたことには大変感謝している。

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場所:東京都写真美術館(恵比寿ガーデンプレース内)
開催:2005年7月−8月
使用材料:カンボジアングリーンシルク 
延床面積:65.325sqm 間口6.7m奥行き9.75m
施工:株式会社フレームマン

この案のもとにはアンコールワット遺跡で壁づたいに"囲繞”(周囲を巡る)した時の体験がある。

写真だけを浮き上がらせる照明計画で、闇の中にグリーンシルクの光沢が魅惑的になった。写真でうまく捉えきれないのだが、肉眼には折り込まれた補色の赤と共に緑の光が感じられるのである。緑の壁の道から一機に白い大きなスペースに入る。尊顔が迎えてくれる。

ほの暗い細長い緑の道と明るい中央スペース。

プランニング。
緑の道は壁の傾きで幅が段々狭くなる。当初は道幅と共に床面を45センチ程上げて再び下げて全体のスケール感を切り替えるために2カ所のスロープを提案していたが、最終的には安全性を優先し床面はフラットなままとした。

photos & plans (c) naoko nishimoto